山無花果の実を見つけて

 日本橋から十五里二町六間のところ、国道一号線沿いに神社があり、境内の裏側に回ると下り坂で、松や名前もわからない木々が雑然と植わっている。
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 樹齢200年を超える黒松。ここ第六天神社のご神木だが、昭和20年代に落雷により上の方が折れて無くなっている。その折れて無くなったところにトンビが巣を作っていたが、数年前カラスとの戦争で巣を明け渡したという。そういえば、トンビとカラスが大声で飛び交って空中戦をしていたことがあったっけ。
 しかしこの日訪れると、巣のあるところにトンビの尾羽が動いていた。巣の補修をしている様子。針金製のハンガーのようなものは、カラスの置き土産か。
 自然界ほど競争の激しいところはないだろう。取ったり取られたり。
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 この亀の子模様がきれいだった。 ※2017年元旦撮影
 「亀の子のその渾身の一歩かな」有馬朗人
 黒松の下側、平べったい空き地に出ると、低木が地面近くに枝を伸ばし葉を広げている。 
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  青い実がついていて、先が赤みを帯びているものもある。目を凝らすと、結構な数。あっちにもこっちにも。枝はすべすべしている。
 「これは山無花果やまいちじく)と言うんだ。」植木屋さんらしい人が声をかけてくる。これ以上大きくはならないらしい。指で実を割って、中を見ると白いものばかり。
 「犬枇杷(いぬびわ)の騒々しくも熟れにけり」(大石悦子)
 山無花果は、犬枇杷とも言う。他に小無花果、山枇杷、天仙果とも。俳句の季語は夏で、黒く色づくと甘くなり食べられるらしい。
 来月、母の特養への入所が決まり、峠を一つ越えられる目途がついた。
 母は、私が中学生のころ家を出て行って、つい3,4年前無一文で私のところに転がり込んできた。
 すでに認知症がすすみ、現在は寝たきりで介護老人ホームにいる。
 リハビリもままならない。見舞いに行っても、天井をポカーンと見続けて自分の世界に入っている母。
 そんな母の顔をいまだ直視できないでいる、私。
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 神社の裏庭を背景に、見慣れない花が、すくっと立ち上がっていた。
令和元年 6月27日 紅の豚次郎拝