トンボさん、おやすみなさい

       

 夜中、暑いので寝床から出て窓のカーテンを開けると、羽根を広げて動かぬ虫。

 寝ぼけ眼をこすってよく見れば、蜻蛉(とんぼ)だったわけだが、なんでこの夜中に網戸なんかに止まっているの?

 網戸の網が、蜻蛉の翅(はね)と同じようで、また眼(まなこ)をこする。

 「ようこそいらっしゃい」

 「君も今日はお疲れだね」

 

 「蜉蝣(かげろふ)ともの音絶えし夜を共に」 (𠮷年 虹二)

 

 また、布団にもぐろう。