EMMAちゃんと過ごした24日間
太陽と 月と 星と
海があって 山があって 風が雲を運んでいる
川がキラキラ輝いている
地球は不思議
お父さん お母さん
私、
生まれたよ
白菜の前にある奇妙な形のものは、野菜である。八頭(ヤツガシラ)といい、里芋の仲間である。味は、里芋はねっとりとしているが、これはほくほくとした食感。関西で正月などによく食べられているそうだ。
包丁を入れて、なかなか切ることが出来ない頑丈なお芋だ。娘の旦那さんの実家からお土産としていただいた。
初めて、赤ちゃんの顔を見に私たちの家に訪ねて来られた。旦那さんのご両親にとっては、EMMAちゃんは初孫だ。手を伸ばし、恐るおそる抱っこ。慣れてくると、わが胸に包み込むように抱き寄せ、その顔を覗き込む。
「泣くという音楽があるみどりごを ギターのように今日も抱えて」(俵万智)
そう、いくら泣いても、手足をバタバタさせても、すべての仕草や表情や声が可愛い。紅葉のような手。小さな、小さなあんよ。
ミルクを上げていると、ぐいぐい哺乳瓶を吸う。ぐいぐい飲んで眠る。ただただ生きようとする姿。
抱っこされながら、私の妻をじっと見つめるEMMAちゃん。見つめながら、時折笑う。その姿は、「癒し」そのもの。EMMAちゃんは、幸せを連れて来た。
赤ちゃんには、周りの人たちを幸せにする力があることを知った。
しかし、EMMAちゃんは、いつまでも私の家に居る訳にはいかない。
その日、旦那さんがやって来た。バッグや紙袋を車に押し込み、娘とEMMAちゃんを乗せる。車のテールランプは、あっという間に遠ざかった。
そして私たちは、以前のように二人きり。
部屋の電気を消す。私たちは静かな夜の中にいる。
娘のいた部屋から、EMMAちゃんのおっぱいを欲しがる声が聞こえるような気がした。
「咳ひとつ赤子のしたる夜寒かな」 (芥川龍之介)