暑さは続くよ
「塗り箸を渡してゆるきわらび餅」 (金久美智子)
京都の老舗、五建外良屋のわらび餅。透き通る黄金色のわらび餅に、濃い目に煎られたきな粉がかかる。
それは、やんわりと冷たい透明感のある食べ物であった。
私の自宅の近所には、小さな川が流れている。相模川に流れ込む支流の一つで、川沿いに遊歩道もある。
今の時期、夜明けになるとここを散策する人達のざっざっと砂を踏みしめる音が聞こえ始め、起き出した私は部屋からぼーっと、行き交う人たちを見るともなく眺める。
「片陰を行き遠き日のわれに逢ふ」 (木村燕城)
午後3時を回ると、このへんは大変な暑さとなるので歩く人はごくまれだ。今日の気温は34℃。木の葉が萎れている。わずかな木陰にホッとする間もなく、その先の道は炎(も)ゆるように延びている。
4月に美しい花を咲かせていた八重桜の木。葉っぱが裏返り、日差しから自分の身を守るように丸まり垂れている。
蝉はジーッジーッと鳴き続け、カラスはギャーッギャーッと騒ぎ立て電線に飛び移って行く。その羽は汗で濡れたように黒光りしていた。
この暑さの中、生き残るのは鳥も虫も草木も並大抵のことではない。
次の片陰に入ったらゆっくり休むことにしよう。