船橋屋のくず餅

 八月に入ったら、すぐに立秋を迎えた。

 「秋立つや川瀬にまじる風の音」  (飯田蛇笏)

 残暑お見舞い申し上げます。気温は午後3時で32度。

 電車が駅に到着し、乗客がどっとホームに降りて来る。改札口では人に揉まれながら駅のコンコースに押し出されると、ラスカの前に出店があった。

 それは亀戸天神船橋屋だった。有名なくず餅やあんみつやところてんを販売している。電車に乗っている時は、アイスクリームを買って帰ろうかと考えていたが、すぐに方針変更。三人前一箱895円のくず餅を購入。

 「前から食べてみたいと思っていたんですよ。」と言うと、売り子さんは「気に入ったらまたお願いします。」と奥ゆかしい返事。

 なかなか亀戸の天神様まで行けないもの。

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 なかなか奥ゆかしいパッケージであるぞよ。

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 箱の中には、きな粉と舟形の容器に入った黒蜜。そしてくず餅。

 小麦澱粉を発酵させること450日、消費期限は2日。わずか2日間の「刹那の口福のために」昔からの製法を引き継いで頑張っている。

 何とも奥ゆかしい心を示してくれるではないか。染み入るようなきな粉と黒蜜の甘さの中に、弾力のあるくず餅を噛みしめて「口福」を感じた。

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 葛粉で作られたくず餅とは異なるが、堂々の名物だ。

 私には難しい俳句だが葛を詠んだ「高名な」句をご紹介しておきます。

 「あなたなる夜雨の葛のあなたかな」  (芝 不器男)

 愛する人を、しっとりと想う句だろうか。そんな気がする。