ヨコスカうみかぜの道①
2021年5月の最後を彩る夕景か。いつもより夕焼けの色が濃くなったのと雲の形が面白く撮影。
その5月半ば横須賀に行って、法務局で実家の建物滅失登記をようやく済ませることができた。2度、3度通った。帰り道は、近くの三笠公園に足を向けゆっくり散歩。
右奥に戦艦三笠が「展示」されている。三笠の艦内を見学したのはすでに10年前。
この辺りの雰囲気もずいぶん変わったなあ。「うみかぜの道」と名付けられたプロムナードが出来上がっていた。
歩道と車道は、海辺の遊歩道らしく波止場のボラード(bollard:杭)で隔てらている。
この通りに面して、横須賀学院がある。妹の卒業した学校だ。
雨に濡れた正門の奥から、やがて勉強を終えた生徒たちが出て来るだろう。
「それから山 それから海 それから畑
それから神話の中の松林をとおりぬけ
何というはるかな道程ののちにそれはあったろう
ゆく手はいちめんの青草と見せて
生きもののような道が傾斜しつくすと
不意に途方もない大きさで端座した海 (中略)」
これは、牟礼慶子の『すばらしい海』という詩の始まりの部分。
この通りを歩いている途中で、不意に鈴木英人の作品と出会った。山下達郎などのレコードジャケット(CDも)を飾るイラストレーター、スズキエイジン。
学校の壁に沿うように、英人の絵が4枚ほどブロック塀のような壁に張り付けられている。日光にさらされたり、雨に打たれたり、土ぼこりを浴びることもあるだろう。
時には、子どもの投げるボールが幾度も当たったこともあるだろう。
にもかかわらず色あせることなく、絵の鮮度を保っている。どのようにして張り付けられているのだろうか。
きっと、初めて訪れた人は「エイジンじゃん!」と叫ぶに違いない。
たくさんの人が行き来し、荒れた砂の道。夕暮れ時、風が止まった道。やがて風が吹き、やさしく砂の上を撫でて行くだろう。
その向こうには、海が広がる。ほんのりと染まった空の下、海は波を寄せ、沖に返していた。その繰り返し。そして、月が静かに海を照らすだろう。
「遥(はる)かにも彼方(かなた)にありて月の海」 (中村草田男)