敬老の日に思う
「老人の日や敬ひて呉れるなよ」(草間時彦)
9月16日(月)母親が入所した特養老人ホームで敬老会が催された。
施設側の挨拶の中で、65歳以上の高齢者が3588万人、総人口に占める割合は28.4%という話しがあった。私も先日65歳になったばかり。働く65歳以上の人は862万人もいるという。
「朝毎の数へもきらぬ花へちま」(邊見京子)
「あなたたちは、間違いなく今の日本の繁栄を築き上げ支えてきた人たちです。」と述べられていた。同感だ。母は、その言葉をどんな表情で聞いていただろうか。
「糸瓜棚この世のことのよく見ゆる」(田中裕明)
挨拶の後、エレクトーンの伴奏付きで童謡の「海」と「ふるさと」、そして施設の歌(校歌のようなもの)が参加者全員で歌われた。
『海』
「松原遠く 消ゆるところ
白帆の影は浮かぶ
干し網 浜に高くして
鷗(カモメ)は 低く波に飛ぶ
見よ昼の海 見よ昼の海…」
いっしょに歌っているうちに、声が詰まって来た。
『ふるさと』
「兎追いしかの山 小鮒釣りしかの川
夢は今も廻り(めぐり)て
忘れがたきふるさと
如何にいます父母 恙なしや友がき
雨に風につけても
思いいずるふるさと
志しを果たして いつの日にか帰らん
山は青きふるさと
水は清きふるさと」
母の故郷は、東日本大震災ですべて海に流され、何も無くなった。母自身も二転三転の人生を送った。そして最後の住所がここだ。
母の人生を調べ直すうちに、今、子供としてそれを俯瞰することが出来るような気がしたが、母の心の底まではわからない。
「帯ゆるく締めて故郷の居待月」(鈴木真砂女)
お祝い膳として出された松花堂弁当を、母が一生懸命食べている間に、私はそっと席を立った。