お地蔵さんの帽子
「かひなしや水引草の花ざかり」 (正岡子規)
墓参りに行った時、駐車場で何気なく後ろを振り返ると、薄暗がりの中に赤い色を見つけた。
「萩の寺水引草は継子(ままこ)めき」 (鈴木真砂女)
継子とは、辞書を引くと「血のつながっていない子」の意味だが、他に「(ひもを)こぶのように結ぶこと」とある。
小さな花の姿と細く長い枝が、そのように見える。
さて草を抜いたりせっせとお墓を掃除して、墓の横に立っているお地蔵さんを濡れたタオルで拭いた。
そして、暑い陽を浴びてさぞ暑かろうと、妻が用意した帽子をかぶせた。
お地蔵さんは、心なしか笑みを浮かべているように見えた。
…この絵は、先日産経新聞に掲載されたもので、京都御苑に咲いていた「シンミズヒキ」を安野光雅さんが描いたものである。
安野光雅さんも水引草に引かれたのだと、勝手に喜んだ訳で。本物を観てみたい。
花は見つけた時が一番美しい。それを写真に収めるのは至難の業だと思う。余計な理屈が入って、自然ではなくなるからかもしれない。
「濡れしまま水引草を活けてあり」 (大木あまり)