静かな時間、三溪園そしてワイン

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 3月29日10時頃、冷たい朝の雨が霙に変わり、次第に雪となって来た。家の中でひっそりと籠っていたい気分になる。

 窓を開けると、たちまち凍えるような風が入って来たが、同時に鶯の健気な鳴き声が聞こえてきた。この鶯は1月頃より鳴き始め、近所に居ついている。

 始めは笹鳴き程度のものだったが、近頃はだいぶうまくなってきた。

 「うぐひすに人は落ち目が大事かな」 久保田万太郎 

 さて、2週間前に横浜の本牧地区にある三溪園に行き、春の訪れを楽しんで来たので、ご紹介しましょう。 

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 JR根岸駅からバスに乗って二ノ谷バス停で下車。三溪園方面に2,3分歩いたところに有名なパン屋さん「本牧館」がある。

 ここで「ウオールナッツリング」というクルミがいっぱい入った人気のパンを購入。パンの基本形である食パンももちろんお薦めだ。

 このお店から、約1㌔ほど歩いたところに三溪園がある。途中の住宅街をキョロキョロしながら歩く。

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 新型コロナウイルスの影響か、訪れる人が少ない。

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 池の向こうに三重塔が見える。

 三溪園は、原善三郎=生糸の輸出などで活躍、財を成した人で、以前記した生糸戦争で渋沢栄一と共に戦った=が土地を購入し、原富太郎が各地より古建築を移築し造園したものとパンフレットに記載されている。

 三重塔は、京都から1914年(大正4年)に移築されたものだ。

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 東京では早々と桜の開花宣言が出たが、3月15日の横浜はまだ一輪か二輪開いた程度。

 高浜虚子の句碑を囲んで蕗が群生している。蕗は俳句では夏の季語だが、実感は春の草と言えそう。

 「母の年越えて蕗煮るうすみどり」 (細見綾子) 
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 投げ込まれた麩に群がる鯉たちの騒ぎを知って、大急ぎでやってくる鴨の群れ。

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 馬酔木(あしび)の花。可愛らしい容姿。

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 「馬酔木咲く金堂の扉にわが触れぬ」  (水原秋櫻子)       

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 どんな花を咲かせていたのだろう。

 「勇気こそ地の塩なれや梅真白  中村草田男 

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 小川の脇に咲く花に目が引きつけられる。

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 川をたどって橋から上流を眺めた。

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 奥に小さな滝があり、水が流れ小川を作る。

 そして気持ちを解きほぐすような春の空気を作る。       

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 こちらは、白川郷にあった建物で合掌造りの堂々とした造り。

 見ごたえ充分。

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  「遠目にも山吹の黄の一重なり」  (細見綾子) 

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 熊笹の葉がきれいだ。そんな中に一人瞑想する僧。

 大漁地蔵(濡れ地蔵)という。大漁と言うから、元々は海の近くに据えられていたものだろうか。

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 「願はくは花のもとにて春死なむそのきさらぎの望月のころ」

    西行法師)

 そう願っているのだろうか。

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 シャ莪(しゃが)の花を見つけた。 ※シャの字は草冠に者

 「刻(とき)経るにつれてさびしやシャ莪の花」 

  (昭和52年鈴木真砂女

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 躑躅(つつじ)のようだが、もう咲いているのかと半信半疑。

 それにしても、とてもきれいなレディーのような花。

 「吾子(あこ)の瞳に緋躑躅宿るむらさきに」 中村草田男

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 さらに歩くと、長い土筆が湿地の中にたくさん生えていた。

 まだ伸びてゆくのだろうか。生命の力強さ。

 「人来ねば土筆長(た)けゆくばかりかな」  (水原秋櫻子) 

 そろそろ出口。 

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 「菜の花といふ平凡を愛しけり」 (富安風生)

 平凡な日常を送ることが、こんなにも有り難いものかとしみじみ思う。      

 三溪園を出てバスに乗り、関内で下車。みなとみらいにある赤レンガ地区まで歩く。

 そして遅めの昼食をJICA横浜内にある港の見えるレストランで取った。

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 静かなレストラン、ポートテラスカフェ。ざわついておらずゆっくり話しが出来る。

 窓近くに席を取り、エスニック料理を食べながらワインを飲んだ。外に赤レンガ倉庫が見え、その先は港、そして海。

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 メニュー1食につき、20円(開発途上国の給食1食分)がTABLE FOR TWOというプログラムに寄付されるという仕組みになっているそうだ。

 「先進国の私たちと開発途上国の子どもたちが、時間と空間を越え食事を分かち合う」というコンセプトで運営されているレストラン。

 世界にはこんな素敵な発想を抱いて、活動している人たちがいる。        

 世の中は広い。ワインがうまい。