哲学者の小径をまわっている

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東京湾に浮かんでいるのは…
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 アメリカの航空母艦ロナルド・レーガン。横須賀を母港とする。
 満載排水量10万1千トン。全長333m。最大幅76.8m。進水は2001年3月。乗員5,680名。搭載機は平時で66機(最大90機)。
 巨体を春の海に浮かばせて、のんびり寛いでいるかのように見えるが、何か点検中だったようで周りにタグボートのような船が何隻かいた。タグボートが時折、空母の横っ腹を押してロナルド・レーガンの船体をゆっくり回転させている。
 2時間ぐらいいただろうか、ロナルド・レーガン東京湾の外へ進路を取った。みるみる視界から遠ざかり、春霞の中に消えて行くようだった。
 電車の窓から普通ではない大きな船を見つけた時、オーっと気持ちが高ぶった。近づくにつれ、それが空母であることがわかった。日本の「いずも」(全長248m)かと思ったがどうも違う。ロナルド・レーガンだったとは!
 最近感動する心を忘れていた。
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 次の詩に出会った時も、目が覚めるような気がした。
 ある日、新聞の「朝の詩(うた)」というコーナーに掲載された14歳の関根晴子さんの詩。
 『「朝だよ起きて」 
  こんな言葉で目覚める
  目覚まし時計が 鳴いている
  
  今日はどんな一日かな
  今日はこんな一日かな
  考えるだけで 笑ってしまう自分
 
  靴をはいて ドアの前に立つ
  このドアを開くと
  新たな一日が始まる』 
 新鮮で、前向きで、生きのいい詩だと思った。
 
 しかし、いまだに意味がわからない言葉もある。
 それは、茅ヶ崎に居を構えていた開高健という作家の言葉。
 「入ってきて 人生と叫び 出ていって 死と叫ぶ」
 関根さんの詩を読んだとき回答が出たかと思ったが、よく読んでみると、ドアだとしても、関根さんの詩とは違うドアのように思える。
 またわからなくなった。 
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 茅ヶ崎開高健記念館がある。その玄関先に据えられた石碑。
 開高健の自宅を記念館にしたもので、自宅の周囲が「哲学者の小径」になっている。今はすぐそばまで住宅が立ち並び、生活の匂いがプンプンしてくるような環境だが、開高は生前この小径を巡りながら、構想を練っていたのかもしれない。
 哲学の小径には、このような類の言葉が他にも掲示されている。
 「明日、世界が滅びるとしても 
  今日、あなたは リンゴの木を植える」など。
 記念館内部も一見の価値ありだ。
 この記念館で私が購入した本の題名、「やってみなはれ みとくんなはれ」(山口瞳開高健著)。
 最初の「やってみなはれ」は鳥井信治郎、それを受けた「みとくんなはれ」は開高健の言葉。
 青雲の志という言葉を、私は遥か昔に忘れていた。
令和元年5月14日 紅の豚次郎拝