K・ヤイリギターを抱えたぜ
10月、横浜市の鴨居の街を歩いていると、線路沿いに最後のコスモスが青空に向かって咲いていた。可憐ではかなげな花だった。
夏に入る頃から、急にギターを弾いてみたいな、どんなギターがいいのかなと気になり始めた。
この一年、山下達郎の曲を毎日のように聞いた。ある時、伴奏で鳴っているギターの音がとても魅力的なことに気づいたからかも知れない。
軽快さでは「SOUTHBOUND#9」が一番。CD(COME ALONG3)のイラストは鈴木英人(スズキエイジン)で気分は明るいワクワク湘南。
この曲と決めて海岸沿いの道とばす君なり「ホテルカリフォルニア」(俵 万智)
歌われる一つ一つの詞(ことば)を確かめる。爪弾かれた弦の振動の、一つ一つの音が心に届く。
「水音(みずおと)と虫の音(ね)と我が心音(しんおん)と」 (西村和子)
楽器店に足を運んだ。モーリスのギター入門セットが良さそうだ。日本製だし作りもしっかりしているだろう。右奥のギターの色がいい。
これと決めて、店の人に声をかける。するとまだ若い店員さんは、「こちらもいいですが、このギターはどうですか」と言う。
店の高いところに吊り下げられていた、赤の入ったこげ茶色のギター。弦をはじくと、ボディーを震わせて深い音色が響いてくる。ジャラーンと弦をストロークすると、低音と高音が共鳴し合ってより深い音色を生み出す。
艶のあるボディー、丁寧な作り。艶というのは大事である。
「よし買った‼」。お値段は、モーリスのセットより2倍近いものとなって、女房にはなんと言おうか。店員さんはヤイリのファンだった。彼が熱くこれを勧めなければ、モーリスにしていたはず。
購入して3カ月。後悔は全くなし。いいものを手に入れた。
腕前は、しかし全くダメ。コードの練習でBm7の音が出せないでいる。短く太い指が原因だ。バレーコードが難しい。指が動かない。なかなかコードを覚えない。
しかしここであきらめる訳にはいかない。コツコツ練習するよ。そして、1年後にはギターを泣かせて、女房の心を震わせてやろう⁉
曲は、山下達郎の「ずっと一緒さ」。これで決まりだ。
「熱燗の夫にも捨てし夢あらむ」 (西村和子)
※2021年10月30日書き換え