外出を控えて下さい
市役所防災センターから、頻繁に放送が流される。
「コロナウイルス感染予防のため外出を控えて下さい」と。
そう、世の中は感染拡大を防ごうといわゆる不要不急の外出を控えている最中。私の会社も、特に出社する用事がなければ直行直帰で構わないと言っている。
それで私も現場に直接出向いて、仕事が済むと会社に寄らずに家に帰るようになった。何となく人混みが多かったり、電車に乗っていると不安な気持ちになるから。
帰宅途中のガランとした東海道線車内(大船⇒藤沢間)。昼過ぎの電車は、普段でも空いてはいるがここまで人が少ないことはない。
家に着くと安心する。ゴロンと横になり、寅さんのDVDを観て笑ったり、本を開いたりして過ごしていた。※余談ながら、寅さんと私は似ているところがある。例えば拗ねるところなど。
それで今日4月19日は、朝からいい天気。富士山は真っ白い雪を頂き、その雪は輝き、その清浄な空気をここまで伝える。
やっぱり、近くの海に出かけることにした。自転車に乗って5分。
海の近くを通る国道134号線は車が多かった。箱根や伊豆方面に向かう西湘バイパスは混雑しているだろう。
浜辺には意外に多くの人がいて、伸び伸び過ごしていた。来る途中の駐車場は閉鎖されていたから、恐らく地元の人が大半だろう。
私達と同じように自宅から自転車や徒歩でここまで来たのだ。
「サーフィンのあるとき濤と息合はず」 (山崎ひさを)
太平洋の水平線の上に、大島が見えた。
実は、大島の形は伊豆半島、それも熱川、稲取付近から見る形が一番恰好いい。
舞踏会の煌びやかなレディが、ドレスの裾を広げ、お相手の男性にかがんで挨拶を返しているような形。
砂浜は、太陽の光に熱せられていた。紫外線の効果で、水虫もウイルスも焼き尽くせ‼
浜辺や遊歩道には、ジョギングしたり、サイクリングしたり、シートを広げてランチを食べる人達がいた。人々は思いのまま潮風に吹かれ、日差しを浴びていた。
いわゆる「3密」とは正反対の開放感。
私達も缶チューハイとハイボールで乾杯。日ごろの鬱屈した気持ちが吹き飛んでしまう。
「悔なき生ありやビールの泡こぼし」 (鈴木真砂t女)
お客さんにビール注いでいる時、ふと昔の恋を思い出しコップからビールが溢れ出てしまった。溢れ出たのは、ビールではなく悔恨の情。
浜辺で、若い男女が寄り添い語り合っていた。いいものだな。
こんな時が私達にもあったなと、自分達の遠い昔を思い出した。
青春は素晴らしい。恋は生きる喜び。生きる証し。時には、悲しい恋に想いを募らせたり。
「冴返るすまじきものの中に恋」 (鈴木真砂女)
人は恋をして結ばれて、子供が生まれ育んで、やがて子は自分の元を離れゆく。そして、昔のように二人きりになり海に来る。
私達の「おうち時間」。
「時は過ぎてゆく」IL EST TROP TARD 歌:金子由香利
眠ってる間に 夢見てる間に
時は流れ 過ぎてゆく
子供の頃は もう夢の中
時は時は 今も過ぎてゆく
あなたの愛に 溺れているうちに
時ははかなく 過ぎてゆく
お前はかわいい あの言葉も
あなたさえも 今は遠い夢・・・
どうしてここにいるのだろう?
澄み渡った青空に浮かぶ、儚げな雲。
UFOみたいに漂って消えてしまうのか。